遠隔ドリッピングの脅威
コーヒーメーカーの脆弱性が発覚(スラッシュドット・ジャパンより)
※写真はランボルギーニ社のコーヒーメーカー。本文との関連はなし
インターネット経由でPCからお好みのコーヒー設定などが実行できるコーヒー
メーカーがあるらしいのだが、その接続キットに深刻な脆弱性があり、外部からの
不正なアクセスにより設定を変更したり、本体を故障させたり、はてはこの
コーヒーメーカーをコントロールするWindows XPのシステムにアクセスすること
も可能である、という話。
コーヒーメーカーを経由して他人の侵入を許してしまう、というこの不思議な現象。
おもてなしもへったくれもない。ところでへったくれって何。
便利さは、危険をはらんでいる。
帰ったらすぐに淹れたてのコーヒーにありつけるのは誠に幸せなことだが。
そのコーヒーをゆっくり味わってもいられない状況を、最新鋭のコーヒーメーカー
が招いてしまう可能性もあり得る。実に現代的な危うさ。
私がこのニュースを聞いて真っ先に思い浮かべたのは、『世界で最も有名な
コーヒーメーカー』の話。
時は1991年、インターネットの黎明期の頃。
アメリカのケンブリッジ大学コンピュータ研究所のTrojan Roomに設置されていた
コーヒーメーカー。
広い構内を延々歩いて研究室にたどり着いたにもかかわらずコーヒーがなくなって
いるという事態を解消すべく、ある関係者がカメラを研究所内のネットワークに
接続してポットの中の状態をどこからでも監視できるシステムをつくりあげた。
やがてそれがインターネットのウェブサーバにも接続され、世界中の人々の目に
触れることになった。世界最初のウェブカメラと言われている。
そのコーヒーを口にすることなどできるはずのないはるか遠くの人々が、米国の
大学の一室にあるコーヒーポットの状態を知るためにアクセスしてくる。
これこそが、インターネット。
私も当時(実際にはかなり遅れて、90年代の後半に入っていたが)実際にアクセス
してみたことを覚えている。
そこには本当に、何の変哲もないコーヒーポットが映っていた。
だが「噂の」コーヒーポットを確認することができて、いたく感激したものだ。
世界とつながっている。
小さくて不鮮明なモノクロ画像が、極東に住む名もなき男にそう感じさせてくれた。
現在はこのコーヒーメーカーもお役御免となっている。2001年08月21日に
撤去されたという。
が、当時のページはアーカイヴ的に残されている。
映っている画像に変化はない。まさに時代と共に止まっている。
世界中から見つめられ続けたポットは、様々な意味でその役目を静かに終えた。
いまやインターネットは、コーヒーポットを監視するのみにとどまらず。
コーヒーポットそのものを自在にコントロールするところまで来ている。
ネット家電と呼ばれる分野は今後さらに進化していくことだろう。
だがその便利さと引き換えに、日常生活における大切な部分を失ってしまう恐れは
ないか。
コーヒーを淹れる、という作業。
これもまた、コーヒーを味わう一過程に含まれる、と考えるのは無意味だろうか。
私自身は、レギュラーコーヒーを愛飲するほどの通ではないが。
コーヒーを抽出する際のある種「儀式的」ともとれる作法は、古来の茶道にも
匹敵するほどの情緒を感じる。
美味ければ、それでいい。
確かにそうなのだが、美味いと感じるのは、あくまでも人間である。
情緒を味わうのに、システムの力を借りる必要はない。
エスプレッソブック―基本技術とアレンジドリンク
門脇 洋之

柴田書店 2004-05
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私がこのニュースを聞いて真っ先に思い浮かべたのは、『世界で最も有名な
コーヒーメーカー』の話。
時は1991年、インターネットの黎明期の頃。
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コーヒーメーカー。
広い構内を延々歩いて研究室にたどり着いたにもかかわらずコーヒーがなくなって
いるという事態を解消すべく、ある関係者がカメラを研究所内のネットワークに
接続してポットの中の状態をどこからでも監視できるシステムをつくりあげた。
やがてそれがインターネットのウェブサーバにも接続され、世界中の人々の目に
触れることになった。世界最初のウェブカメラと言われている。
そのコーヒーを口にすることなどできるはずのないはるか遠くの人々が、米国の
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これこそが、インターネット。
私も当時(実際にはかなり遅れて、90年代の後半に入っていたが)実際にアクセス
してみたことを覚えている。
そこには本当に、何の変哲もないコーヒーポットが映っていた。
だが「噂の」コーヒーポットを確認することができて、いたく感激したものだ。
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現在はこのコーヒーメーカーもお役御免となっている。2001年08月21日に
撤去されたという。
が、当時のページはアーカイヴ的に残されている。
映っている画像に変化はない。まさに時代と共に止まっている。
世界中から見つめられ続けたポットは、様々な意味でその役目を静かに終えた。
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ネット家電と呼ばれる分野は今後さらに進化していくことだろう。
だがその便利さと引き換えに、日常生活における大切な部分を失ってしまう恐れは
ないか。
コーヒーを淹れる、という作業。
これもまた、コーヒーを味わう一過程に含まれる、と考えるのは無意味だろうか。
私自身は、レギュラーコーヒーを愛飲するほどの通ではないが。
コーヒーを抽出する際のある種「儀式的」ともとれる作法は、古来の茶道にも
匹敵するほどの情緒を感じる。
美味ければ、それでいい。
確かにそうなのだが、美味いと感じるのは、あくまでも人間である。
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