ギャングはどぎゃんですか
●『アメリカン・ギャングスター』公式サイト
原題:AMERICAN GANGSTER
製作年度:2007年
監督:リドリー・スコット
上映時間:157分
出演:デンゼル・ワシントン ラッセル・クロウ 他
長い。2時間半以上ある。
が、冗長ではない。
集中力を途切れさせることなく、物語が展開される。
ギャングスター、とはいわゆるギャングのことだが。
スター(STAR)ではなくスター(STER)である。
蔑称の意味が含まれる(wikipedia:ギャングの項目)。
すなわち尊敬されるべき存在ではない。
が、世の中の状況によっては英雄視されることもある。
この物語の主人公、デンゼル演じるフランク・ルーカスは実在の人物。
60年代後半から70年代前半にかけて、米国でのし上がり
莫大な財を成した「ギャングスター」のひとり。
ベトナム戦争時、現地に駐留する軍とのコネクションを
利用して東南アジア産の大量の品物をダイレクトに
(:仲介業者を経ることなく)仕入れるルートを独自に
開拓する。
そして市場にそれまでよりも安価でかつ高品質な商品を
広く普及させた。いわば流通業界の革命児。
誠に喜ばしい話である。
扱う商品がヘロインでなければ。
映画の中では、主人公も含めて、麻薬を商売にすることに
関しての罪悪感はほとんど感じられない。
「消費者」の求めるものを、求める価格で。
当時台頭しつつあったディスカウントストアの手法を
主人公はそのまま実践したといえる。
金の集まるところに、人々は集まる。
人々はすべからく彼の財力の前に跪く。
それは彼の天敵であるはずの警察機関もまた同様。
映画のほとんどの部分において、彼の行動はいわゆる
「ギャング的」なものではない。
こっそり水増しして売ろうとする仲買人を厳しく戒め、
品質の維持に奔走する。従業員である弟に対して
派手な服装や行動はとるな、控えめな態度を心がけろと
つとめて紳士的であるよう忠告する。
彼はいわば「近代的なヤクザ」の先駆けなのだろう。
取り引きの中身が合法か否かの違いだけで、あとは立派な
ビジネスマンの所作である。
流通とは何か。
人々の求めるものを提供する。
その行為に「倫理」は介在し得るのか。
ギャング映画なのに、そんなことを考えさせられる。
現代のヤクザも、ひと昔前の「斬ったはった」の時代は
とうに終え、その活動を経済面に大きくシフトさせている。
筑豊といえば、ヤクザのまち。
かつては確かにそうだった。
でも今は違う。
筑豊には依然としてゴロツキはいるが、ヤクザはいない。
何度も書くが、金の集まるところに、人は集まるものだ。
ところで、映画のネタばれを少々。
ラストはフランク・ルーカスが刑期を終えて釈放される
シーンで終わるのだが、エンドクレジットがすべて流れ
終わったところで、実はもうワンカットある。
それを観て私は
ああフランクは結局殺されてしまうのだな
と受け取っていたのだが、事実はどうやら違うようで。
実在のフランク・ルーカスはまだ存命であり、この映画の
制作にあたり様々なアドバイスを与えたという内容の記述が
公式サイト内にあるのだ。
となるとあのシーンは何を意味するのか。
今のところ、わからない。
リドリー・スコットによる謎かけなのか。
あるいは何らかの伏線が隠されているのか。
まあ総じていえば、映画として面白い作品だと思う。
傑作とは呼べないが、よく出来ている。
60〜70年代の話だが、現代とリンクする内容の物語。
人間のやることなど、時代によってそうそう変わるものでもない。





コメントを書く