国際電話













お母さん? あたし。元気にしてる?
そう、よかった。
あたしは元気だよ。
うん、こっちはもう夜。日が暮れるのが早いんだ。

父さんの具合はどう?
・・・そう、相変わらずなんだね。
大丈夫。父さんの分まであたし頑張るから。
うん、心配ないよ。
今月分の仕送り、いつもより少なくてごめんね。
そう。工場も今大変みたいなの。
機械動かす時間を減らしてるんだって。
だからなかなか稼がせてもらえないのよね。

うん、だいぶ慣れたよ。
研修生、っていっても作業の内容は他の従業員と
全然変わらないの。
言葉通じないから何かと不便だけどね。

あ、生活は不便じゃないよ。
来る前は、田舎だって聞いてたけど。
そっちに比べたらすっごく都会。当たり前かあ。
夜だってお店開いてるし。
あ、心配しないで。夜遊びなんてしてないから。
そんなお金ないし。

あたしラッキーだった。
日本語学校行かせてもらえて。
うん、母さんには感謝してる。
大丈夫、この調子ならもうすぐ借金返せるよ。

おかげであたし、職場ではチームリーダー
任されてるんだもん。このあたしが、だよ。
他の子よりいくらかマシな日本語ができるから、
なんだけどね。給料もちょっとだけ多くもらってる。

うん、仕事もしっかりやんなきゃいけないけど、
他の子たちの面倒も見なきゃいけないから。
けっこう忙しいのよね。

大丈夫だってば。疲れてないよ。
主任さん、イヤな奴だけど。
はっきり言ってくれないの。何でもかんでも。
指示してくんなきゃわかんないのにさ。
なんか、あきらめちゃってるみたい。

でも、イヤな奴ばっかりじゃないよ。
みんな親切。
でもどうつきあっていけばいいのかわかんない
みたい。あたしたちもわかんないし。
とにかく作業さえきちんとしてくれれば
それでいい、ってかんじ。

えっ、何?
・・・うん、いないこともない。
ていうか、いる。

その人ね、優しいの。
あたしたちのこと、何かと気にかけてくれるし。
うん、同じ職場の人。

やだ、そんなんじゃないよ。全然そんなんじゃ。
向こうだってどう思ってるかわかんないし。
うん、あたしもそこまでは考えてない。

あたし、働きに来たんだもん。ここには。
そんなつもりで来たんじゃない。
日本人にはなれないよ、たぶんあたし。

大丈夫、帰るから。
今度の旧正月にはちょっと無理だけど。
うん。こっちでは休みじゃないのよね。
でももう少しお金がたまったら帰るから。

あたしにはみんながいるから。
父さんも母さんも、小麗も。
そういえば小麗はどうしてる?
・・・ああ、そうなの。
学校さえ行ってくれればそれでいいんだけど。

母さん、泣かないで。
大丈夫だったら。

手紙書くね。写真も送るから。
うん、撮ってもらったの。
こっちね、冬にはやっぱり雪が積もるんだよ。
積もらないって言ってたのにね。説明会の時には。
で、夏はすっごい暑いの。ヘンでしょ。

母さん、元気出して。
あたし、まだまだ頑張るから。

じゃ、そろそろ切るね。
母さんも身体に気をつけて。
うん、また電話する。

母さん、大好きだよ。
じゃあね。


2007年11月04日








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