ロード・ヒーリング

ロード・ヒーリング

チベットで道路に寝るのがブームlivedoor ニュースより)


チベットでは道路に座り込むことがブームになっているそうだ。
分かる。よく分かる。日中に太陽熱を吸収した道路は、夜、熱を放出するために温かい。昼夜の温度差が大きいチベットの人達にとっては、ちょっとした暖房器具となるわけだ。日本でそのようなことをしていれば、道路交通法で排除されるか、自動車の餌食になるかしかない。しかしあれは気持ちいい。経験のある方はそうはいないと思うが、あの「生ぬるい」感覚はクセになる。例えとしてはお風呂の半身浴か。熱くもなく、冷たくもない。中途半端な温度はリラックス効果抜群だ。「ロード・ヒーリング」とでも名付けてみてはいかがだろうか。

私は以前からこのロード・ヒーリングの信者だったわけだが、アスファルトの道路にあぐらをかいて飲むビールの美味しさは格別なもので、友達を誘っては「道路」に行っていた。法律と危険のギリギリにある歩道に座り込んで見る景色はまさに異空間。夜の暗闇に紛れたその独特な雰囲気に包まれて否応なくテンションは上がる。道路の熱の気持ちよさもさることながら、あの低い位置から眺める非日常感を楽しんでいた面も多分にあったのだろう。道路の熱はその空間を感覚的に演出してくれる装置だったと言えるのかもしれない。しかし道行く人の視線は夜の冷気以上に冷ややかではあったが。

おそらくチベットの人も暖を取る目的と同時に「眺め」も楽しんでいると思う。昼間に見ることのできない景色。スレスレのところを通り過ぎる車のタイヤの大きさ。過ぎ去った後の進行風。少しだけいつもより高い夜空。そこいら中に響く談笑の声。昼間には感じることができなかった、空気の静けさ。寒ければ汗が出るほど暖房を入れ、暑ければ凍りそうなほど冷房に頼る日本人がとうに忘れてしまったその感覚。

道路に座り込めと言っているのではない。やはりルールは守らなければ逆に人の迷惑になる。チベットはチベット、日本は日本だ。モノが溢れる日本では癒されたり、気持ちよくなるためにはお金や道具がいる。見習うべきはもう少し能動的に感覚を鋭くしてそれらを身近なところで見つけ出そうとする感性を育てることだ。

やれエコロジーだ、やれ地球温暖化だとインフラの改革に大慌ての先進国が第一にやらなければならないことは、そういうことだと思う。



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