ストップランプに恋をして
ハイマウントストップランプ、トヨタ2種に標準装備(J-CASTニュースより)
トヨタは、「プロボックス」と「サクシード」を改良し、後方からの視認性向上を図るハイマウントストップランプを標準装備して、2008年8月1日から販売を開始した。あまりメジャーな車ではないからご存知でない方もおられると思うが、ワゴンタイプの普通乗用車で特に「サクシード」の簡易パッケージであるバンモデルは商用車として街中でも営業マンが運転しているところをよく見かける。カローラバンに代わる企業車の代表的な存在だ。
でもって、その2車種にハイマウントストップランプが標準装備されたと各ニュースサイトが報じているわけだ。あまりに些細なそのニュースが逆に目立ってしまって何ならこの際徹底的にハイマウントストップランプについて書こうと思いたったわけである。
このハイマウントストップランプ、どこの国の誰が考えだしたのかは分からないが余程車が好きな人が実用性を兼ねたカーアクセサリーの一つとして装着したのかもしれない。その後日本において平成17年以降に製造される車には装備が義務づけられ、それ以前の車は付いていなくてもお咎めなしという法規が施行された。今では当たり前のように後ろを走る車に注意を促している。道路交通の安全性という面からすればその効力は如何なく発揮されていると言っていい。
しかしこれが20年前ともなれば話は違う。現在のように付いているのが当たり前なことではなく、車のエクステリアとしてとてつもなくカッコよかったのだ。職場の同僚が納車されたばかりの初代ホンダ・アコードインスパイアーで颯爽と会社の駐車場に現れた時には度肝を抜かれた。リアスポイラーの横一直線がハイマウントストップランプだったのだ。何だそれは?え?カッコよすぎじゃないか。ハイマウントストップランプを買ったらインスパイアーが付いてきました、ぐらいの衝撃だった。当時私が乗っていたオンボロクレスタにはハイマウントストップランプはおろかリアスポイラーすらついていなかった。これではいけない。これでは車に乗っている意味もないし、後続車に対してあまりにも無礼である。日に日に私の気持ちの中で大きくなっていくハイマウントストップランプの赤い光が煌々と私を照らし始めていた。恋の始まりだった。
こんな先行き不透明なカーライフを悶々と過ごしていたある日、そう忘れもしない25歳の誕生日。当時つき合っていた彼女からプレゼントには何が欲しいのか聞かれた。突然の問いかけに動転した私はにべもなくいらない旨を伝えると彼女はこう言った。
「ハイマウントストップランプは?」
25歳にもなる大人が、心から欲しいと願っていたものをプレゼントされる時、どのような表情をしてよいものかと強ばる口元を抑えつつ落ち着きを取り戻そうと試みたが、平静を装おうとすればするほど胸の高鳴りは隠しようもなかった。ブレーキを踏めば普段通りに点灯する、ともすれば見落とされそうな両サイドのストップランプとは一線を画し、車の中央でその存在を高らかに主張するハイマウントストップランプ。恋をして幾年月、もう心にブレーキを踏むことはない、自分の気持ちに正直に、例えそれが彼女であろうとも思いの丈けを告げる時が来たのだ。
「あっ、いいかもね。ハイマウントストップランプ」
「かも」とは何だ「かも」とは。まだまだ己の気持ちに正直になれないことがもどかしくもあったが、かくして私のオンボロクレスタの後部にはハイマウントストップランプが装着されたのであった。
あれから十余年。安全性重視の車社会での最たる装置としてハイマウントストップランプが市民権を得て、もっぱら当たり前になってしまったけれど、咄嗟に目が行くその魅力や存在感は今もなお私の胸のうちに忘れられてはいない。
ブレーキを踏むたびに思い出す淡い物欲の物語。
おしまい。





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