やはり野に置けダブルファンタジー
「幻の花」テーマに「いとうせいこう」が語るトークショー(Exciteより)
横浜市神奈川区の商業施設「横浜ベイクォーター」では2008年8月31日まで、「URBAN GREEN FESTA with planted」が開催されている。中でも8月24日13時からスペシャルイベントとして行われるトークショーには興味がある。3部構成になっているうちの第2部、作家のいとうせいこう氏と園芸家の柳生真吾氏による「ダブルファンタジーを探そう」というプロジェクトがそれだ。
ダブルファンタジーと聞いて真っ先に思い出すのがジョン・レノンのアルバムである。5年という長い沈黙の後にリリースされた「ダブルファンタジー」は結果として彼の最後の作品となってしまったわけだが、今もなおその歌声は万人の記憶に新しいのではないだろうか。
そのダブルファンタジーというアルバムタイトルが花の名前からつけられているということは、ファンには有名なエピソードだったという。しかしそれがどんな花であるのかは誰の知るところでもなかった。一説にそれはフリージアであったり、また別にクリスマス・ローズであったりとはっきりとした答えを誰もが見つけられないまま時が過ぎることとなった。
この話が謎を残したまま朽ち果てるのもロマンであるが、正体を突き止めるのもまたロマンである。園芸家の柳生真吾氏がダブルファンタジーについて調査をしている最中に日本の園芸界の第一人者、荻巣樹徳氏にもこの話が伝わり共に調査に乗り出すこととなる。そして世界に広がる彼の園芸家としてのネットワークの元、ついに判明したのである。
ファンタジーとは一説にもなっていたフリージアのことで、ダブルとは八重咲きという意味があるということを。
八重咲きのフリージア。淡い黄色をしたふくよかな花びらを幾重にも開いたその花は、香りも豊かで、柔らかい優しさに満ちている。ジョン・レノンが息子のショーンを連れてバミューダ動物園で見たというダブルファンタジー。ウイルスに弱い球根であるために自然繁殖している可能性すら定かではないが、現在バイオテクノロジーによる交配で幻の花を蘇らせようと日々研究に取り組んでいる方もいるそうだ。
ダブルファンタジーを探し出し、あるいはテクノロジーで蘇らせることに異議を唱える人はいないだろう。この花を平和運動の象徴として広く賛同者を募っているサイトにも数ある著名人の名前が並ぶ。ジョン・レノン=平和の公式をあからさまに強調しすぎる風潮に事実私は懐疑的だし辟易もしている。彼がこの花の名前をアルバムタイトルに用いたのは世界のため、世界の人々のためではなく、自分自身、そして家族の安寧の為であったに違いない。個々人の安らいだ気持ち一つ一つがジョン・レノンの想像する世界の幸せなのである。
この運動のメンバーの一人にフリージア栽培家の山下忠弘さんという方がいる。以前何年もの間、このウイルスに弱いダブルファンタジーの株を輸入し続けた人物だ。何故そこまでしてダブルファンタジーにこだわったのかという問いに彼はこう答えたという。
「妻がこの花を好きだったものでね」
心から平和や愛を唱えるということは結局そういうことではないだろうか。
ダブル・ファンタジー/ジョン・レノン





コメントを書く