老師の影

葉問

ブルース・リーのカンフーの師匠の伝記映画、製作決定!
eiga.comより)

詠春拳(えいしゅんけん)
少林拳の流れを汲む中国武術のひとつ。200~300年の歴史があるという。
いくつか流派はあるが、その中でも最も有名なのが葉問派。
流派を創設した葉問(イップ・マン、写真)には、あのブルース・リー
米国に渡る前に教えを受けていたことがよく知られている。
「生涯で師と呼べるのは葉問先生のみ」と彼は生前語っていたらしい。
後にリーが創始した截拳道(ジークンドー)には詠春拳からの影響が
色濃く残っている。

動きは非常にコンパクトで短打接近戦を得意としている。
女性が護身術として習得するのに最適、などという話もある。
歩幅は小さく、どっしりとした構え。足技はあまりない。
南派武術の典型ともいえよう。
中国武術の様式は大別すると、長江(揚子江)を境に南北に分かれる。
北派はまるで舞踏のように動作が大きい。足技も多用する。
南派はそのほとんどが手技によるもので、足はさほど使わない。

ブルース・リーの足技は特徴的だが、おそらくは北派武術またはキック
ボクシング、テコンドーなどの技を採り入れたものと思われる。
あくまでも撮影用の動きと考えるべきだろう。
蹴り技は、実戦には向かない。
突きなどよりも確かに威力はあるが、自らの身を危険に晒すことになる。
彼の体術は様々な武術の要素をミックスしたものだが、その根幹を成すものは。

燃えよドラゴン』の武術大会のシーンにおいて、試合を始める際に
お互いに手の甲を触れ合わせた「構え」の状態から、一瞬で相手を倒す
一連の動きがある。あれなどはまさに詠春拳。接近からの短打。鮮烈である。

彼のスタイルがウケてからというもの、香港映画界における「カンフー」は
詠春拳“色”でほぼ統一されてしまったような感がある。
それ以前は北派武術の影響も見受けられたのだが(むしろ北派の方が
動きが派手だけに映画向きといえる)、ブルースの強烈なイメージと
成龍(ジャッキー・チェン)の登場が、とどめをさしてしまった。
以降、李連杰(リー・リン・チェイ、現ジェット・リー)が『少林寺』で
見事な北派武術を披露するまで、カンフー = 詠春拳の時代が続く。

いうなれば葉問は、香港カンフー映画の恩人ともいえる大老師。
その彼の伝記作品がつくられるとならば、感慨この上ない。

葉問を演ずる予定のドニー・イェンはかつて、その名もズバリ『詠春拳』という作品に出演したことがある。今回の起用もその流れを汲んでいるのかもしれない。
この作品ではミシェル・ヨーが詠春拳の創始者とされる女性、厳詠春を演じている。
厳詠春は実在の人物かどうかは定かでない。伝説の人。

詠春拳は葉問らの尽力の甲斐あって中国はもとより海外でも広く普及し、
今日もなお親しまれている。日本を除いては。

葉問は自分の技を「日本人に教えてはならない」と言い遺したそうだ。
それがどういう考えによるものなのかは、想像するしかない。
おそらくは史実に基づくものだろう。
彼の教えが弟子達によって忠実に守られた結果なのかどうかは何とも言えないが、
詠春拳は海外での認知度に比べて我が国では無名に等しい。
とても残念に思う。

この映画を機に、葉問そして詠春拳に関心を持つ人々が増えれば。
そして我が国でも詠春拳が普及するきっかけになれば。

ファンとしてこれほど嬉しいことはない。


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