かゆいところに舌が届く

舌

舌でコンピュータを動かす装置、米大学が研究ITmedia Newsより)

舌の下側に小さな磁石を移植することによって、磁気センサーを介して身障者が
舌先だけで車椅子を運転したりコンピュータを操作できるようになる技術の研究が
米ジョージア工科大学のチームにより進められているらしい。

舌で、カーソルを移動させる。面白いアイデアだ。
人間の舌は驚く程複雑な動きができる。
工夫次第ではカーソルを動かすのみならず、様々なコマンドに対応できる
かもしれない。実に興味深い。

たとえば口蓋の部分に貼付くような形でセットできるキースイッチと組み合わせ
ることでポインティングとタイピングというPCの基本操作は実現できてしまう。
ケータイのボタンのようなスタイルであれば言うまでもなく日本語の50音を
カヴァーできる。技術的にさほど難しいとは思えない。
訓練次第では巷の女子校生のごとく高速入力が可能になるだろう。親指が速いか、
舌が速いか。口の器官を使うことで「しゃべる」感覚に近づけるかもしれない。

ともすれば健常者にも適用できる可能性が充分にある。
ユーザはようやくタイピングの呪縛から解放される。
タンギング(Tongue-ing)操作時代の幕開けである。
現時点でのタンギングは一般的には管楽器を演奏する際のテクニックのひとつだが
きっとこれによって技術分野にも流用される言葉のひとつに加わることだろう。
むしろ管楽器奏者こそが優秀な舌入力技術者に成長することも考えられる。

事務職においてはタッチタイピングのスキルなど見向きもされなくなる。
面接で重視されるのは舌の動きだ。
ええと、今回の募集は入力業務ですんで、んじゃ早速見せてもらえますか。
はい、あーん。おお、だいぶ鍛えてますねえ。ストロークタイムはどのくらい?
はあ、1文字0.04秒ですか。となるとタンギングマスターの資格取得も可能ですね
あ、いやいや必要ありませんよ。今では特に難しい試験でもありませんしね。
というような会話がやり取りされる時代が近づいているのかもしれない。

舌を巻くとか舌の根も乾かぬうちになどという古くからの慣用句は、その用法が
徐々に変化していくことになるだろう。
「舌」の意味合いが「手」や「腕」などに置き換わっていくことが予想される。
手が足りない→舌が足りない、腕がなる→舌がなる、といった具合に。
これまで人体の部位としては文字通り日陰の存在だった舌が、一躍表舞台に
押し上げられることになる。
人々は舌の手入れに余念がない。表面にコケをはやすなどもってのほか。
もともとが健康のバロメータのような存在だったが、それに加えて人間の表現の
窓口としての認識が確立される。舌上手の世代の台頭である。

武道の世界ではまずディープキスから始まる。
双方の口の中で丁々発止の組み手が交わされ、達人の域になれば一瞬で勝負が
決まる。まいりました。弟子にして下さい。余韻に震えながらこうべを垂れる。
いや、俺とお前はもうすでに兄弟だよ。達人は薄く笑って舌なめずりをし去って
いく。そんなクールな光景が展開されるかもしれない。

舌という器官は、人間がさらなる進化を遂げる上で重要な存在と化すと思う。
舌先三寸とか二枚舌とか、日本語にはなぜか嘘や口先といったマイナスのイメージ
が強いが、人体表現の中核を成す「口」も、舌がなければ使い物にならない。

来たる日に備えて、舌を磨いておこう。


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