テクノ・テレパシー
(TechCrunch Japaneseより)
記事内の動画ではわかりにくいかもしれないが、要するに「発音せずに
発音する」技術のようだ。
装着されたネックバンドが発声時の神経信号を拾って無線でコンピュータに
送信し、解析された合成音声がコンピュータから出力されるという仕組みらしい。
訓練すれば実際に発声せずとも声帯に発声時と同様の神経信号を送ることが
できるという。
いわばテクノロジーによる「テレパシー」の実現への第一歩だ。
コミュニケーションの可能性を広げることにつながると思う。
さらに合成音声に変換せずにそのまま「意味」のデータとして受信して
脳に流し込むことができれば完全な“以心伝心”の連環が完成するが、それは
さすがに簡単なことではあるまい。
でも、不可能ではないと思う。
そう思わせるだけの力を、この遠隔発声システムは持っている。
何らかの要因により声を失った人にとっても、もちろん有効だろう。
だがそれだけには終わらない。
コンピュータを使用する際には必ず経ねばならない「入力」という操作。
キーボードやマウスの呪縛から人々はようやく解放されるかもしれない。
ヒューマン・インターフェイス。
インターフェイスが、文字通りヒューマン(:人間)に近づこうとしている。
これはコンピュータの在り方そのものを変えることになるであろう。
その先に待ち構えるのは何か。
すっかり頭が固くなってしまった私には、想像もつかない。
タイピングから解放された人々は、ますます文字から遠ざかっていく
かもしれない。
より「直情的な」言葉がネットに溢れかえるのだろうか。
失言が、失言のまま飛び交うさまは、現在のネット社会をますます
殺伐としたものに変えていくかもしれない。
文字に残らなければ、読み返すということもできなくなる。
だからといってインターフェイスに罪があるわけではない。
すべては人間の使い方次第。
便利な道具は、その便利さの度合いだけの「人間性」が使う側に求められる。
我々は、道具に試されるのだ。
ただ、この技術の普及によって従来からの肉声による発声が、ないがしろに
されることのないよう祈るばかりである。
感情を表現するという行為において「声」は重要なはたらきを担う。
そこに込められる様々なニュアンスは、人間を人間としてつなぎとめる。
もっとも伝えたいことは、人と人の間の空気を震わせて、伝えるべきだ。
マシンに決して肩代わりさせてはならない。
空間を共有するということ。
その大切さを、テクノロジーは逆説的に知らしめてくれる。
そうやって人間にフィードバックする存在こそが、これから求められる
真の「テクノロジー」と呼べるものなのかもしれない。
空気を震わせよ。そして心を震わせよ。





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