感じ方を感じたか

不快な音楽

調査結果に基づいて合成「人々が最も不愉快になる曲/最も聴きたい曲」:試聴可能WIRED VISIONより)

1990年代に行なわれたオンライン投票(人々が最も嫌う/好む音楽の要素)の
結果に基づいて制作された楽曲、だそうだ。
聴いて快/不快に感じる人の割合が最大になるよう特別にアレンジしてあるという。

ちなみに500人がアンケートで答えた不快要素の内容は、(クリスマスなどの)
祝日を称える歌、バグパイプ、パイプオルガン、子供の合唱と一般的な子供らしさ
の概念(?)、Wal-Mart、カウボーイ、政治的な絶叫、George Stephanopoulos氏
[ABC Newsのワシントン支局長、ニュースキャスター。クリントン政権で主席
報道補佐官などを務めた]、コカコーラ、シンセサイザーによるボサノバの演奏、
激しくかき鳴らすバンジョー、ハープのグリッサンド[次々と弦の上に指を素早く
滑らせる演奏法]、チューバが刻むベース音の単純な反復、といったようなもの。
なぜか「不協和音」は入っていない。



(20分以上ありますので聴き飽きたらお好きなところで停止させて下さい)

ダウンロードしたいという奇特な方はこちらへ

Komar & Melamid and David Soldier - "The Most Unwanted Music"(MP3)

一方、人々から最も好まれる(とされる)曲も制作されている。

その要素は、愛、ソプラノサックス、ささやかな野心、テナーサックス、結婚の
プロポーズ、かっこいい電子ドラムのフィルイン、夜間勤務、高まるストリングス
の音、パワーコード[完全5度(または完全4度)とオクターブのみの和音で、ロック
で多用される]、甘ったるい男女のハーモニー、など。




ダウンロードしたいという酔狂な方はこちらへ

『The Most Wanted Song』——Komar & Melamid and David Soldier (MP3)

さて、あなたはこれらを聴いてみて、どう感じただろう。
おそらく、逆の印象を受けるのではないかと思う。
不快とされる要素てんこ盛りであるはずの音楽は、けっこう面白い。
好んで聴くほどのものでもないが、少なくとも不快な気分にはならない。
不快に感じるのはせいぜい、曲が異様に長い、程度のものか。

そして心地良く感じるはずの曲には、一種の嫌悪感さえよぎる。
まるでスーパーやショッピングセンターの店内でよく耳にするような、毒にも
薬にもなりそうにない古くさいアダルトコンテンポラリーミュージック。
こういうスタイルがお好きな方々には申し訳ないが、腰を据えて耳を傾けるだけの
価値はない、と私は個人的に思う。
過度に「感情的」で、押し付けがましい。作為が見える。
胸焼けしそうなアイウォンチューである。

調査されたのが1990年代である、ということも考慮すべきかもしれない。
この時代に比べれば我々は耳が肥えている。
音楽における許容度が、格段に広がっている。
上記の不快要素は、当時の人々にとっては「日常」だったのだろう。
今は、逆に新鮮に響く。
そして「快」とされる音楽は、退屈だ。どこにも破綻がない。
今では失笑の対象にしかならない。
音楽は、体験である。
既視感だらけの体験など見向きもされない。

音楽制作の要は「構成力」である、ということをあらためて思い知らされる。
素材は、素材でしかない。
たとえ個々のパーツはガラクタであったとしても、組み合わせ次第では
芸術作品たり得る。上記の曲が芸術の域に達するとは思わないが。
現代は「編集」の時代なのだ。
シンセによるボサノバの演奏。いいじゃないか。私は好きだ。
ハープのグリッサンド。自作の曲にもつねづね使いたいと思っていますが何か。

価値観は、多様化する。
昨日の不快は、今日の快。

ところで上記の調査は、もともとは最も嫌われる/好まれる「絵画」の研究から
派生したものらしい。どちらかといえば、こっちの方が興味深い。
同サイトには国別の嫌われる/好まれる絵画のページがある。
色や形、大きさ、構図や題材、スタイルや筆のタッチなど、文化や国民性に
根ざしたものと思われる各国の人々の好みの違いが垣間見えていて面白い。

好きか嫌いかが判断の大きな基準を占める現代。
それに理由をつけることはいくらでもできるが。

大切なのは、そう感じたのが「自分」であるということ。

感じることから、すべてが始まる。


ネタ元:ザイーガ


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