額面通りのガスメン
見知らぬ人にガソリン代を手渡す、謎のヒーロー“ガスメン”登場(エキサイトニュースより)
ガスメン。
ちっともカッコ良さげなネーミングではないのだが。
人々を救うのに、カッコ良い名前は特に必要ではない。
ヒーローとは元来、そういうものなのだろう。
ちなみに米国ではガソリンのことを一般にガス(gas)と呼ぶ。
これが英国ならペットロールメン(PetrolMen)と呼ばれることになるのかも
しれないが、何だかパトロールメンと聞き間違えてしまいそうで不憫である。
まあヒーローも普段は地道に巡回警備することで市民を守っているというケースも
あるだろう。ヒーローたるもの日常においては決して派手な活動などしない。
ガソリンスタンドで給油中に見知らぬ男性から無言で高額の紙幣を握らされたら。
あなたはどう反応するだろう。
何かの冗談か、はたまた勘違いか。
さては援交だな、と。
突然のことに思考があらぬ方角へ先走ってしまい給油所でひとり顔を赤らめる
お父さんがいても不思議ではない。ガソリン以上のものを注入されかねない。
紙幣と共に残された名刺には
私たちのコミュニティーに燃料補給を。 ガスメン
と記されていたそうな。
コミュニティー、と表現しているところがキモであろう。
意味は広くも狭くも解釈できるが、根底にあるのは人間愛だと思う。
本当にそのスタンドのすぐ近所に住んでいるのかもしれないが、それは別に大した
問題ではない。
ひょっとしたらスタンド側が仕組んだ一大キャンペーンなのかもしれない。
だとすれば粋なはからいであるが、単なる売名行為にしては少々突飛すぎる。
ひところ話題に上っていた、公衆トイレなどに高額の現金を残し、世の中のために
使って下さいなどとメッセージが書き添えられた拾得物に関する一連のニュース。
あれと今回のガスメン、似ているようで全く違う。
世の中のために、と書いておきながら、世の中との接点を持つことを拒んでいる。
それぞれの事情はあるのかもしれないが、寄付という行為はお金や物資が動くこと
だけで成立するものではない。そこに明確に「人」が介在する必要がある。
でなければ、受け取る側にすっきりしない感情を与えてしまうことになる。
恵むことではなく、励ますことが最大の目的なのだ。
ガスメンの行動には、明解な目的がある。
彼らの出現自体が、社会へのはっきりとしたメッセージとなる。
感化された第二・第三のガスメンが世界中のいたるところ(中東は除くべきか)に
現われるかもしれない。きわめてゲリラ的な“奉仕”活動。愉快ではないか。
根本的には事態の解決にならないが、庶民の苦悩は一時的こそすれ和らげられる。
ヒーロー(と呼ばれる人々)の現代における役割は、たぶんそういうところにある
のではなかろうか。
付け焼き刃でも刹那の一瞬でも構わない。人々に笑顔を。夢を。
それが積み重なることによって、何かが変わる。
ガスメンと出会ったことに感激した人が、受け取った紙幣を使わずにそのまま
自らがガスメンと化して次の人へと手渡す。ペイ・フォワード。
そんな光景がぐるぐると展開されたら、どんなに楽しいことか。
原油の尋常ならぬ高騰ぶりに日々喘ぐ人々の顔にも、つかの間の光が差すのでは。
善意は、流通する。
そしていつか、あなたのもとへも。
石油文明の破綻と終焉

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