映画『ダークナイト』総評
前評判が異様に高かった。けなしているものがひとつもない。
前作の『バットマンビギンズ』も公開時、同様に高い評価を得ていた。
ハリウッド大作もの、特にアメコミヒーローものにしては珍しい傾向だと思う。
ひとえにクリストファー・ノーラン監督の手腕によるものだと思う。
気がつけば彼の作品は処女作と『プレステージ』以外はすべて観ていることになる。
後者を観ていないのは、ただ単にタイミングを逸した、という理由による。
どれもが人間の内面に深く踏み込んだ力作で、私の“肌に合う”。観る作品を
監督で選ぶことはあまり多くないが、彼の名前を目にすれば、やり過ごすことは
できない。現在最も注目すべき映画監督のひとり。
さて感想だが、とにかく長い。上映時間152分。2時間半を超える。
体調を整えて観に行った方がよいだろう。
内容は、素晴らしい。今年いちばんの傑作となり得る質の高さ。
バットマン映画ではあるが、バットマンはいわば状況設定のひとつでしかない。
これは現代社会を扱った、痛烈な告発作品である。
なんといってもジョーカー役のヒース・レジャー。
彼なくしてはこの作品は成立しなかったことだろう。
映画の中の悪役が、これほど恐いと感じたことはない。
なぜならジョーカーは、私の中にも存在する可能性があるから。
いや、誰の中にも存在し得る危険な「闇」なのだ。
ヒースの演技は、それを明確に表現している。
彼は今年1月に薬物(睡眠薬)の過剰摂取で他界しているが、1989年に公開された
前作の『バットマン』でジョーカーを演じたジャック・ニコルソンが、彼の死の報に
接した際に「俺は警告したんだ」と発言したことが話題になった。
ある意味、ジョーカー役を演じるには「身命を賭して」取り組む必要がある
のかもしれない。それほどまでにギリギリのラインに踏み込まざるを得ない
キャラクターである、ということの証しだろう。
ヒースの鬼気迫る怪演は、映画というメディアをさらなる高みに押し上げた。
残念ながら、彼は戻ってこれなかったわけだが。
正義は、絶対ではない。
状況に応じていとも簡単に覆される。
人は、人それぞれの信念に基づいて行動する。
それに対して正邪を決めることはできない。
何が善で、何が悪か。
バットマンとジョーカーのみが、それを背負っているわけではない。
彼等の存在は、まさに表裏一体。
すべての人間がバットマンであり、ジョーカーである。
ジョーカーが社会に揺さぶりをかけ、バットマンがそれを阻止する。
マッチポンプ。
すべてがシステムの中に組み込まれた予定調和なのか。
「社会」という舞台の上で踊らされているのか。
わが国でも最近頻発している凶悪犯罪。
彼等は無意識にバランスを取ろうとしているのか。
自らの精神的均衡と、社会的均衡。
社会そのものが、ひとつの人格と化しているのか。
では「自分」は、どこにいるのか。
などと考え始めたらきりがない。
そういう哲学的な方面にまで思いをはせるきっかけを提供する作品である。
もちろんエンターテイメントとしてもきちんと成立している。完成度が高い。
だがおそらく大半の人々は『ハムナプトラ3』や『セックス・アンド・ザ・シティ』
や『崖の上のポニョ』や『花より男子ファイナル』などを選ぶことだろう。
それでもいっこうに構わないのだが。
ほんの一瞬くらいは、自分自身の内面奥深くを覗き込む機会に触れてみては
如何だろう。
難しいことではない。
映画館に行くよりもはるかに簡単だ。
【ムービー・マスターピース】 『ダークナイト』 1/6スケールビークル バットモービル


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前作の『バットマンビギンズ』も公開時、同様に高い評価を得ていた。
ハリウッド大作もの、特にアメコミヒーローものにしては珍しい傾向だと思う。
ひとえにクリストファー・ノーラン監督の手腕によるものだと思う。
気がつけば彼の作品は処女作と『プレステージ』以外はすべて観ていることになる。
後者を観ていないのは、ただ単にタイミングを逸した、という理由による。
どれもが人間の内面に深く踏み込んだ力作で、私の“肌に合う”。観る作品を
監督で選ぶことはあまり多くないが、彼の名前を目にすれば、やり過ごすことは
できない。現在最も注目すべき映画監督のひとり。
さて感想だが、とにかく長い。上映時間152分。2時間半を超える。
体調を整えて観に行った方がよいだろう。
内容は、素晴らしい。今年いちばんの傑作となり得る質の高さ。
バットマン映画ではあるが、バットマンはいわば状況設定のひとつでしかない。
これは現代社会を扱った、痛烈な告発作品である。
なんといってもジョーカー役のヒース・レジャー。
彼なくしてはこの作品は成立しなかったことだろう。
映画の中の悪役が、これほど恐いと感じたことはない。
なぜならジョーカーは、私の中にも存在する可能性があるから。
いや、誰の中にも存在し得る危険な「闇」なのだ。
ヒースの演技は、それを明確に表現している。
彼は今年1月に薬物(睡眠薬)の過剰摂取で他界しているが、1989年に公開された
前作の『バットマン』でジョーカーを演じたジャック・ニコルソンが、彼の死の報に
接した際に「俺は警告したんだ」と発言したことが話題になった。
ある意味、ジョーカー役を演じるには「身命を賭して」取り組む必要がある
のかもしれない。それほどまでにギリギリのラインに踏み込まざるを得ない
キャラクターである、ということの証しだろう。
ヒースの鬼気迫る怪演は、映画というメディアをさらなる高みに押し上げた。
残念ながら、彼は戻ってこれなかったわけだが。
正義は、絶対ではない。
状況に応じていとも簡単に覆される。
人は、人それぞれの信念に基づいて行動する。
それに対して正邪を決めることはできない。
何が善で、何が悪か。
バットマンとジョーカーのみが、それを背負っているわけではない。
彼等の存在は、まさに表裏一体。
すべての人間がバットマンであり、ジョーカーである。
ジョーカーが社会に揺さぶりをかけ、バットマンがそれを阻止する。
マッチポンプ。
すべてがシステムの中に組み込まれた予定調和なのか。
「社会」という舞台の上で踊らされているのか。
わが国でも最近頻発している凶悪犯罪。
彼等は無意識にバランスを取ろうとしているのか。
自らの精神的均衡と、社会的均衡。
社会そのものが、ひとつの人格と化しているのか。
では「自分」は、どこにいるのか。
などと考え始めたらきりがない。
そういう哲学的な方面にまで思いをはせるきっかけを提供する作品である。
もちろんエンターテイメントとしてもきちんと成立している。完成度が高い。
だがおそらく大半の人々は『ハムナプトラ3』や『セックス・アンド・ザ・シティ』
や『崖の上のポニョ』や『花より男子ファイナル』などを選ぶことだろう。
それでもいっこうに構わないのだが。
ほんの一瞬くらいは、自分自身の内面奥深くを覗き込む機会に触れてみては
如何だろう。
難しいことではない。
映画館に行くよりもはるかに簡単だ。
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