【特集】バナナのきもち
08月07日は「バナナの日」なのだそうだ。単なるダジャレに過ぎないと思われるが、それはともかく今やバナナは季節を問わず、日本人(及び世界中の多くの人々)にとって欠かせない貴重な食材となった。唐突ではあるが今回はバナナについて採り上げてみたい。
バナナはおやつに含まれますか。
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【食材ニッポン】バナナ 若者を引きつけろ (FujiSankei Business i.より)
若者のバナナ離れが進行しているという。
単身者は房ごと買う機会が少ない(コンビニ等の普及)とか外食の増加などが
影響していると考えられているようだ。誠にもったいない。
◆バナナほど単身者向けの食品はない◆
その形状といい、栄養価といい、とても自然のものとは思えない(厳密に言えば
自然のものとは言えないのかもしれないが)ほどに完成されている。
まず、生食(:そのまま食べられる)ができる。これがいちばん大きい。
現代人は調理の手間を厭う。時間をかけずスナック感覚で手軽に食せるのは
それだけでアドバンテージが高い。そしてあのかたち。皮を四方に引っ張って
剥くというあの合理性。最後まで手を汚さずに中身のみを味わうことができる。
まさにファストフード感覚。他の食材にあれほどの合理的「美」があるだろうか。
しかも単体で。量も一人分にちょうど良い。大人の男性一人を満腹にできる。
天然の状態で現代人の生活にマッチするあのたたずまいは、奇跡に近い。
神が人類に与えたもうた最大の贈り物ではないか。もし神がいるのなら。
◆天然のサプリメント◆
さらに言わずと知れた滋養の高さ。アスリートが競技中にバナナを頬張るシーンは
お馴染みだが、あれはバナナに含まれる数多くの糖質(ブドウ糖・果糖・ショ糖
など)がそれぞれ体内に吸収される時間が違う(時間差が生じる)ため、結果的に
エネルギーが長く持続するという性質を利用しているわけである。
ナチュラルスポーツフード。何も運動選手がことごとくバナナ好きというわけでは
決してない。中には三度のメシよりバナナが好きという人もいるかもしれないが。
にもかかわらず意外なことにバナナはカロリーが低い。
1本(100g)あたり86kcalしかない。ご飯1杯(150g)が252kcalだから
約3分の1である。その割には腹持ちが良い。軽い食事としては充分といえる。
その他カリウム・マグネシウム・ビタミンB1・B2・B6・ナイアシン・葉酸・
食物繊維にセロトニンといった重要な栄養素をバナナは含んでいる。これらは
他の食材では加熱などの調理により失われてしまうことも多いが、バナナは生食が
できるのでそのまま摂取することができる。
のみならず今話題のポリフェノール(抗酸化作用を促す)も含み、またガンの治療
にも使われる免疫増強剤OK432を凌ぐほどの免疫力増加作用を持つという
医者要らずのイライジャ・ウッドである。かつては「林檎一個に医者要らず」と
謳われてきたが、その地位はバナナに明け渡す日が近づいているのかもしれない。
林檎一個をたいらげるのはけっこう大変だが、バナナは5分で食べ終えられる。
時間に余裕のない現代人にとってはこの上なく最適な栄養補給源といえよう。
◆バナナに種がなくてよかっタネ◆
バナナにはもともと種がある。
輪切りにした際に中央部に見られる黒いつぶつぶは、種の名残である。
種のある原種バナナは現在でも残っており、地元の人々は食っているらしい。
美味いものではないだろうが、ちょっと味わってみたい気もする。
種無しバナナは紀元前5千年〜1万年ほど昔に、偶然できたものを人間が栽培して
増やしていったと考えられている。場所は東南アジア。フィリピンやマレー半島。
バナナは「木」ではなく実際は「草」である。木の幹のように見える部分は
葉っぱが重なりあってできている(「仮茎(かけい)」と呼ばれる)もの。
その点からいえば、バナナは“野菜”ということになる(現代では樹木に実る
ものが「果物」、それ以外は「野菜」という解釈になっている。したがって
イチゴ・スイカ・メロンなども野菜に含まれる)。
仮茎のそばに生える新芽を株分けすることでバナナは増やされていく。
日本で消費されるバナナの99.9%以上は輸入品(国内では沖縄・鹿児島・宮崎
などごく一部で栽培されているのみ)で、輸入元はフィリピンが90.5%を占める。
輸入“果物”全体におけるバナナの占める割合は約6割(58.6%)、国民一人当たり
年7.6kgを消費していることになる。まさに輸入フルーツ界の巨人である。
あたしそんなに食べてないわよとおっしゃるご婦人。もしや違うバナナを夜ごと
食されているのでは。はいすみませんすみません。
◆新鮮さとの闘い◆
まだ成熟していない時点で収穫され、日本に届く頃に食べごろになるよう厳密に
調整されている。日本に最初にバナナが持ち込まれたのは1903(明治36)年、
台湾航路の船員の手によって7かごのみ輸入されたのが始まりとされる。
北九州の門司は「バナナの叩き売り」の発祥の地として有名だが、その背景は
当時のかの地が海外との重要な貿易拠点(台湾から地理的に近い)であり、大量の
バナナが荷揚げされていたことによる。輸送中に熟してしまったバナナを
いち早く換金する必要に迫られた露天商が、街頭に立ち通行人を集めて威勢良く
売りさばき始めたのがあのスタイルの始まりであるらしい。早く売ってしまわない
と商品が傷んでしまう。なので価格はどんどん下げる。でも大損は抱えたくない。
必死の売り手と事情を知る買い手の丁々発止の攻防が熱く繰り広げられるわけだ。
いにしえの商売人達の苦肉の策が、ストリートパフォーマンスに昇華した瞬間。
きっかけはあくまでも自然発生的なものだが、それが伝統芸能として定着していく
過程は誠に興味深い。生活に密着したものこそ人々から長く支持されるという
証しではないだろうか。
黄色いバナナが食べられるのは幸せなことである。
◆バナナはなぜ安いのか◆
明治・大正時代は庶民にとって高嶺の花だったバナナも、昭和に入るとようやく
一般家庭に普及するようになる。それでもお土産や病気の時などにしか目にする
ことができない、特別な食べ物であったという。現代では考えられないが。
戦時中にバナナの輸入は途絶え、戦後の輸入自由化の動きに伴い1963(昭和38)
年、バナナの輸入自由化がスタートする。1970(昭和45)年時には南米
エクアドル産のバナナが輸入量第1位となるが、その後フィリピンにて日本市場
向けの大規模農園が次々とつくられ、1973(昭和48)年にフィリピンからの
輸入量が1位になってからは現在に至るまでその地位を明け渡していない。
バナナの価格が安定しているのはフィリピンのおかげ、といえるだろう。
しかし昨今の原油価格高騰の煽りを受け、この「物価の優等生」たる食材も今後
その被害を被ることになるかもしれない。
バナナが高級品になる日。
その時我々は、バナナの有り難みを心の底から知ることになる。
◆生活を豊かにするバナナグッズ◆
さて、問題なのはバナナが「生鮮食料品」であるということだ。
保存の状態が悪いとすぐに傷み始める。
せめて1週間でももってくれれば、一人暮らしの世帯でも何とか一房を消化する
ことができるがこれがなかなか難しい。
バナナはつねにエチレンガスを放出しており、棚などに置いておくとその接触面
から傷みが進行する。理想的なのは、吊るすこと。実った時と同様の体勢を保つ。
ホームセンターなどではよくバナナホルダーが売られている。あれを利用するのも
ひとつの手段であろう。ただし室内でペットを飼っている世帯ではほぼ間違いなく
彼等の餌食となってしまうので環境や設置場所をよく吟味する必要がある。
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また、屋外でも手軽にバナナを味わいたいという人には専用のキャリングケースが
ある。街中でカジュアルにオシャレにバナナにかぶりつく、というスタイルが
流行れば、新しもの好きの若者もバナナに目を向けるようになるかもしれない。
一時期、ペットボトルの水を携帯する動きがあったが、これにバナナが加われば
もう何も要らないではないか。我々現代人の食生活は、ここに完結する。
携帯バナナケース

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バナナそのものとはあまり関係がないが、バナナ型のドアストッパーというのも
ある。
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これを床にセットすれば、急なお客様にも対応できる最適なネタ振りとして
成立する。気の利いた訪問者なら絶妙の間合いですっころんでくれるだろう。
ちなみにバナナの皮はなぜ滑るのか。バナナの可食部に面する果皮の内側は
多量の植物油を含んでいるため「潤滑効果」と呼ばれる現象が発生し、摩擦
係数が低減するため滑りやすくなるのだそうだ。だからどうした、と言われれば
返す言葉もないが、バナナの皮を踏んで滑って転ぶという一種のギャグは、
どうやら世界共通であるらしい。こんなところにもバナナの絶大なる影響力を
窺い知ることができる。生粋のバナナファンはバナナそのものを論じるのみならず
こういったバナナが引き起こす二次的な現象も大いに考察し、路上にバナナの皮が
落ちているのを見つけた際にはこの時とばかりに踏んで滑って転んでみせて、
過去より伝え知るバナナの効能を身を以て確認すべきだと思う。
バナナは、身近である。
身近であるからこそ、見えないものもある。
様々なものの価値観が検証されている現在、我々はもう一度その素晴らしさを
見直す時期に来ているのではないだろうか。
そんなたいそうなもんじゃないかもしれないが。
参考:バナナ大学
バナナ - Wikipedia
バナナと日本人―フィリピン農園と食卓のあいだ (岩波新書)

鶴見 良行
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